平成17年3月17日
スギャン・モロー 樽セミナー
スギャン・モロー(セガン・モロー)社とは
量において世界トップの樽メーカー
樹齢100年から150年のオークを使用している
私有林と国営林との違い
@ フランスでは営林省がオーク(樫)の栽培を管理している。このため、フランスのオークの栽培面積は現在1700haとなっており、これは100年前に比べ倍の面積となっている。(森林伐採の環境の中でフランスの自慢)
A 私有林だと樹ひとつひとつの高さがバラバラになるが病気やばらつきの原因となる。国有林はそれを統一することでばらつきや太陽の光が入らないようにする。
樽の欠陥例
節の生成、年輪湾曲、ひび割れ、弾丸亀裂、伐採不良⇒ワインに悪影響を与える。
樽作成まで
・ 欠陥のものや、使える部分を含めて生産量の25%程度しか樽にならない。(このため高価になる)
・ 樽材になるオークは繊維に沿ってまっすぐに切断しないといけない。そのため、太陽の光などを過度に浴びると結び目が出来、そのオークが使用できなくなる。(国営林は高さを統一しているため光を浴びにくい)
・ 樽材は約27枚を組み合わせて作成。接着剤も釘も使用しないため、密着度が重要となる。
・ 樽のロースト。焼き具合はワインの生産者の要望にひとつひとつ応える。
・ スギャン・モロー社はボルドー大学などワイン醸造などの研究者と共同で研究している。
樽材の熟成
樽材は一度乾燥させたあとスギャン・モロー社では水をかける。こうすることで木材の熟成を促進させることが出来、また、ワインに嫌味になる成分を除去できる。(他はやっていない)
樽熟成のメリット
@ 化学的および微生物的なワインの安定⇒不必要なものが沈殿
A ポリフェノールを安定させることでタンニン分がまるくなる⇒複雑味を与える
B 若いワインの知覚的印象の向上
C 良いワインはテロワールの持つ果実味と樽熟成とのバランスが重要
樽熟成による成分の変化
@ Ellagitannins タンニン成分⇒骨格に影響を与える
A Lactone du Chene 香り成分⇒香りに影響を与える
この成分があるため、オークが唯一ワインの熟成に向いている木材である
木目
木目とは木の一年の生長を示す
<貧しい土壌>⇒木目は細かくなる
<肥沃な土壌>⇒木目は荒くなる リムーザンなど
木目の効果
<細かい>香り成分【大】タンニン【少】⇒赤ワインと特定の白に向く(特にグランヴァン)
<中程度>香り成分【中】タンニン【中】⇒白ワインと特定の赤に向く
< 荒い >香り成分【少】タンニン【大】⇒スピリッツなどに向く
樽の品種
樽に使われるのはQuercus種と言われ、その中に以下の3種がある
A. セシル種⇒フレンチオーク⇒香り、タンニンのバランスが良い⇒赤のグランヴァン向き
B. ペドンキュラタ種⇒蒸留酒向き
C. アルバ種⇒アメリカンオーク⇒香り成分などが豊富
アメリカンオークは密閉率が高く50%を程度を樽材として使えるため75%を使えないフレンチオークよりコストが安い。
フレンチオークの産地として有名なところは
リムーザン、アルゴンヌ、ヴォージュ、ブルゴーニュなど。
※ トロンセも有名だが現在営林省のオーク育成のサイクル(200年)を終えたところで現在は森林を休めているため生産されていない。
地理的条件がオークの構成物質に与える影響
A. Aldehydes Furaniques(糖分)⇒グリル香
B. Phenols Volatis (木素質)⇒燻製香・スパイス香
C. Aldehydes phenols (糖分) ⇒バニラ香
D. Methy Octalactone (脂質) ⇒新鮮な木 →あまり多いと不快な香りになる
焼き加減を強くすれば樽香は強くなると考えがちだが、実際には反比例する。
焼き加減が強いとEllagitannins(タンニン成分)やMethy Octalactone(ココナッツ・ミルクのような香り成分)が減る。
樽の焼き方とその影響
焼きなし ⇒青い木の香り、苦み
ライト(5分) ⇒強い樽香
ミディアム(10分) ⇒繊細な香り(赤)
ミディアム+(15分) ⇒非常に複雑な香り(赤白)
ロースト(20分) ⇒燻製香・スパイス香
Derive Furaniques 樽を焼くことで発生する香り⇒1年で80%程度落ちる
このため技巧としては太目の樽材を使用し(65mm)、2年目は削って再度使う。
大樽のメリット
大樽は発酵に非常に向いている。クリュ特有の酵母の保存もできるし、外温の影響を受けにくい。アルコール発酵温度の高い状態でタンニンを抽出することができる。酸素を摂取することもできる。
などの理由でステンレスの発酵タンクよりも優れているとのこと。
TASTING
ドメーヌ・シルレ グランド・レゼルヴ 2002 (1500円程度)
ドメーヌ・シルレ テラ・ノストラ 2003 (2500円程度)
シャトー ヴァランドロー 2004 スタンダード樽 (未定)
シャトー ヴァランドロー 2004 ヴァランドロー特別試験樽 (未定)
シャトー ジロラート 2001 (10000円程度)
ジロラートは新樽のバリックで樽発酵を行う奇想天外なワイン。以前飲んだときとは若干印象が違ったが、時間とともに大きく変化し、赤ワインなのにソーテルヌのような香りがする非常に濃密なワイン。ヴァランドローはふたつの樽の違いはわずかにあるのだがまだ
閉じた状態で飲めるレベルではなかった。シルレはタナ主体のワインでワインとしてはまずまず良かったが樽の印象がやや果実味より勝っていた。
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